ナラ、ブナなど大木の落葉樹が葉を落すと、梢に鳥の巣のような丸いかたまりが現れます。
寄生植物のヤドリギです。自ら光合成もするので、正確には半寄生植物というそうです。
 大伴家持の歌に、このヤドリギを詠んだ一首があります。

天平勝宝二年正月二日、国庁に饗(あえ)を諸(もろもろ)の郡司等に給ふ宴の歌一首 (万葉集 十八 4136)

<原文>
 安之比奇能 夜麻能許奴礼能 保与等理天 可射之都良久波 知等世保久等曽

<訓読>
あしひきの 山の木末(こぬれ)の寄生(ほよ)取りて 
挿頭(かざ)しつらくは 千歳(ちとせ)寿(ほ)ぐとぞ

<通訳>
山の梢のから寄生(ほよ)を取って、髪に挿したのは、千年の命を祝う気持からです。 (「新編古典日本文学全集 萬葉集4」 小学館)

「寄生(ほよ)」は、ヤドリギの古名。この歌を作った当時の家持は、国司として越中に赴任していました。
越中の国庁は、現在の富山県高岡市伏木にあり、天平勝宝2年(700)の正月、家持は、国庁で開かれた宴で、集まった郡司らに新年のお祝いの歌を披露しました。それがこの歌です。

また、フランスやイギリスなどには、クリスマスにヤドリギのリースを飾り、その枝の下では女性にキスをするのが許される習慣が残っており、そうすると、その1年が幸せになるといわれています。

西洋でも、日本でも、ヤドリギは神聖な植物といえます。

ネットで探したら、鎌倉・鶴岡八幡宮境内の大木のヤドリギがありましたので添付します。
1本の木に、ものすごくたくさんのヤドリギが寄生しています。壮観です。

新年を迎えるに当たり、万葉集の一首を贈ります。
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