(16-8~9)「詮(せん)すべなし」・・なすべきてだてがない。どうしようもない。しかたがない。
(16-9)「いなみ」・・いやがって。「いなむ」の連用形。「いなむ」は、「いなぶ」の変化した語。承知しないということを表わす。断る。いやがる。辞退する。
(16-10)「止事(やむこと)をえず」・・やむをえず。とどまることができない。しかたがない。どうしようもない。
(17-5)「さつま樫(がし)」・・ブナ科コナラ属の常緑樹。四国、九州の温帯に分布する。ハナガガシ(葉長樫)の別名。
(17-7)「いすのき」・・柞。柞樹。蚊母樹。マンサク科の常緑高木。本州中部以西の暖地に生える。高さ二〇メートル、直径一メートルほどに達する。樹皮は灰白色。葉は長さ五~八センチメートル、幅二~四センチメートルの長楕円形で、時に大きな虫こぶができる。春、紅色の小さい花が総状に集まって咲く。実は卵形のさやとなり毛が密生する。虫こぶはタンニンを含むので染料の原料とし、材は堅く、床柱や床板のような建築材、櫛(くし)などの器具類、炭、薪に用いられるほか、柞灰(いすばい=磁器の釉(うわぐすり)の一つ。柞<いすのき>の灰。磁器釉の媒溶剤に適し、古くから有田焼などに多く用いられた=)を作る。いす。ゆすのき。ひょんのき。ゆしのき。くしのき。
(17-8)「目通(どお)り」・・目の高さ。なお、「目通り」は、林業で、立ち木の太さにいう語。人が木の傍に立って、目の高さに相当する部分の樹木の太さ。目通り直径。
(17-8~9)「目通りにあたり」・・異本は、「目通りのあたり」につくる。
(17-10)「下(しも)つ方(かた)」・・下の方。「つ」は、格助詞で、~の。~にある。体言、または体言に準ずるものを承け、その体言が下の体言に対して修飾の関係に立つことを示す。「天(あま)つ風」「沖つ白波」。、「の」「が」が、変遷の過程で主格表示の用法を獲得しながら、現在もなお用いられているのに対して、「つ」は上代には格助詞として盛んに用いられたが、中古以降は複合語の構成要素として認められるにすぎない。現代では「まつげ」(目つ毛)「やつこ」(家つ子)のように一語化したかたちで残る。「つ」の濁音化した形「づ」(「己づから」)および、その音交替形と見られる「だ」(「木(く)だ物」「毛だ物」)はいずれも、語構成要素として用いられるが、これらを含む語は少ない。
(18-1)「垣(かき)」・・垣立(かきだつ)。和船の舷側上部を構成する欄干状の垣。荷物を積む「胴の間」は舷側の壁(ハギツケ)で構成されているが、垣立はその外側に付く装飾と補強の機能を持つ部品。近世の大型商船(いわゆる千石船など)や軍船では、複雑かつ大掛りのものとなり、中央の伝馬込(てんまこみ)より前部を舳(おもて)垣立、後部を艫(とも)垣立という。商船の場合、艫垣立は舳垣立より高く造られ、艫の屋形の側面を構成し、ここに乗組員の出入り口である「開(かい)の口(くち)」や窓を設ける。「開の口」には、戸・障子が立てられ、荒天時の波の打ちこみを防ぐ。なお、伝馬込(てんまこみ)も垣立の一種で、「伝馬込」の名は、空船の時ここに天馬船を置くためについた。
また、大阪~江戸間を航海した廻船・菱垣廻船の名は、垣立の下部に菱垣模様の格子をつけたことから名づけられた。資料4 ウエブサイト「輪廻転生」より。
(18-4)「はんどう」・・筈緒(はずお)の別称。和船の帆柱の先端から船首にかけて張る太い麻綱。帆の上げ下げをはじめ、伝馬、碇(いかり)、荷物などの重量物の上げ下げに際し、身縄の張力を帆柱が受けないように、反対側に張って対抗させるためのもの。
(18-5)「柱、つるにひかれて」・・異本は、「柱、つなにひかれて」に作る。
(18-8)「五日の日」・・異本は、「五日の朝」に作る。
(18-8)「辰時(たつどき)」・・午前8時ごろ。
(18-8)「未時(ひつじどき)」・・午後2時ごろ。
(18-10)「あか(垢)」・・海水にまじった不純物が底に沈み、固まりついたもの。水垢。「あかをかへる」とは、船中に入った海水を海へ汲みだすこと。