(42-1)「涕(なみだ)」<漢字の話>・・ジャパンナレッジ版『字通』には、<「涕」thyei、「涙」liuei、「洟」jieiはそれぞれ声義の関係があり、「泗」sietもその系統の語。洟(い)は鼻液、泗もまた鼻よりするものをいう。みな涙の類>とある。
(42-5)「あららげ」・・荒くして。下2動詞「あららぐ」の連用形。
(42-5~6)「船を下(くだ)し、登らんとて」・・本文に則していえば、尾張から督乗丸を江戸に向け下し(航行し)、荷物を降ろしたり積んだりして、また、故郷の尾張に向け、登ろう(航行しよう)として。
(42-6)「くるしみにあらずや」・・苦しむでないことはない。苦しみだ。「ずや」は、打消しの助動詞「ず」の連用形「ず」+反語の係助詞「や」で、二重否定になる。「~ではないことはない。~である」
(42-7)「うたふ」・・悲鳴をあげる。泣く。
*「サア、いま金払へば料簡する。もし金がなけりゃ引摺(ひきず)って行てうたはすのぢゃ、うせさらせ」(歌舞伎・花雪恋手鑑〔1833〕)
(42-9)「さしも」・・副詞「さ(然)」に助詞「し」「も」が付いてできたもの。副詞「さ(然)」を強めたいい方。これほどにも。あれほどにも。
(42-11)「おもてを合(あわ)せて」・・顔を見合わせて。「おもて」は、「面」で、顔。「合て」は、異本は、「見合せて」に作る。