森勇二のブログ(古文書学習を中心に)

私は、近世史を学んでいます。古文書解読にも取り組んでいます。いろいろ学んだことをアップしたい思います。このブログは、主として、私が事務局を担当している札幌歴史懇話会の参加者の古文書学習の参考にすることが目的の一つです。

2015年08月

記事タイトル『ふなをさ日記 人』9月注 

【北海道立文書館所蔵のふなをさ日記の書誌】

「ふなをさ日記」は、北海道立文書館所蔵図書である(旧記1316)。その書誌(書物の外観・材質・内容成立上特徴を記述したもの。書史)に触れる。表紙の「ふなをさ日記」の下に丸に星印があり、星の中央に「文」とある。これは、北海道道庁の「北海文庫」所蔵図書の印である。

「北海文庫」は、金田吉郎(かねたきちろう)氏の寄贈図書の名前である。金田氏は、明治23(1890)北海道庁属となり、財務部経理課長、檜山爾志久遠奥尻太櫓瀬棚郡長、小樽高島忍路余市古平美国積丹郡長を歴任、明治30年(1897)東京府属に転じた。明治37(1904)東京府南多摩郡長に就任してから、同郡八王子町に「北海文庫」を設立した。氏は、北海道庁に勤務後、北海道に関する図書を蒐集した。氏の「図書献納ヲ御庁ニ願スル理由」(以下「理由書」。『北海文庫図書ノ始末』所収)の中で、「北海道ニ関係アルモノハ新古細大ヲ問ハズ、断管零墨(断簡零墨=だんかんれいぼく。古人の筆跡などで、断片的に残っている不完全な文書。切れ切れになった書きもの=)ヲ撰マズ、極力之ヲ蒐集セリ」と記している。金田氏は、同年55日に北海道庁長官河島醇(かわしまじゅん)に「図書献納之儀ニ付願」を提出している。氏は、前掲「理由書」のなかで、「本年一月、御本庁舎火災ニ罹リ、御保管ノ図書モ多ク灰燼ニ帰シタルト聞ク・・不肖吉郎所蔵ノ図書ヲ御庁ニ献納シ拓殖ノ参考ニ供セントス」と献納の理由を述べている。「本庁舎火災」というのは、明治42111日午後6時過ぎ、北海道庁内印刷所石版部から火災が発生したことをいう。この火災で庁舎屋根裏の文庫にあったすべての文書が焼失した。金田氏が献納した図書は、合計1326点である。明治政府賞勲局は、金田氏の寄附行為に対して銀杯を送っている。

 「ふなをさ日記」は、金田氏の寄贈によるものである。金田氏が、この本をどうようにして蒐集したのかについては、不詳である。

(表紙)「図書票簽(としょひょうせん)」・・表紙の中央に「図書票簽」が貼付されている。「簽(せん)」は、ふだ。「簽」は、竹で作ったので竹部。

 <漢字の話1>古く竹で作った文具・書を表す漢字・・①「符(ふ)」・・両片を合わせて証拠とする竹製のわりふの意味を表す。②筆、③箋(せん)・・戔は薄いの意。うすくひらたい竹・ふだの意。④篇、⑤簡(かん)・・竹をけずり編んで文字を書くふだ。⑥「簿(ぼ)」・・竹を薄くけずったちょうめんの意味を表す。

 <漢字の話2>竹部の漢字・・①「第(だい)」・・順序よく連ねた竹簡の意味から、一般に、順序の意味を表す。②答(トウ。こたえ)・・竹ふだが合うさまから、こたえるの意味を表す。③「等(トウ。ひとしい)」・・「竹+寺」。竹は竹簡(書類)、脚の「寺」は役所の意味。役人が書籍を整理するの意味からひとしい。④「算(さん)」・・「竹+具」。数をかぞえる竹の棒をかぞえるの意味を表す。

(表紙)「舊記(きゅうき)」・・図書票簽の「類名」欄に「舊記」とある。「舊」は、常用漢字「旧」の旧字体。北海道立文書館の「旧記」は、近世後期から明治初期までに成立した北海道関係の地誌・紀行・日記・歴史関係の記録などが2341点所蔵されている。原本に類するものは少ないが、すぐれた写本が多く、その内容の豊富さにおいても、誇りうる集書といえる。本文書はそのひとつである。

 <漢字の話>①「旧」の部首は、多くの漢和辞典では「日」。「舊」の略字として用いられてきたが昭和21年の当用漢字制定当初に「舊」の新字体として選ばれた。

②「舊」の部首は「臼」。

③部首に「隹(ふるとり)」がある。「雀」「雁」「雛」などを含む。この部首を「ふるとり」と呼ぶのは、「舊」に字にもちいられているため。しかし、「舊」は「隹」部ではない。

(表紙)「ふなをさ」・・船頭。現在は「船長(せんちょう)」が一般的に用いられる。

<変体仮名>・・「布」→「ふ」、「那」→「な」、「遠」→「を」、「佐」→「さ」

<漢字の話>「遠」・・「エン」は漢音、「オン」は呉音。変体仮名「遠(を)」の「を」は、呉音から発生した。呉音の例として「遠流(おんる)」「久遠(くおん)」などがある。

<変体仮名>「遠(を)」・・「を」は、仮名文字発明当時、「ウォ」のような発音だった。だから、現在の発音の語頭の「オ」を、歴史的仮名遣いで「を」と書かれたものがある。

*語頭が「を」の例・・尾(を)張、鼻緒(はなを)、甥(をひ)、終(を)へる、雄々(をを)しい、丘(をか)、岡(をか)、可笑(をか)しい、犯(をか)す、拝(をが)む、桶(をけ)、長(をさ)、幼い(をさ)ない、収(をさ)める、叔父(をじ)、伯父(をぢ)、惜(を)しい、教(をし)へる、牡(をす)、夫(をっと)、男(をとこ)、一昨日(をととひ)、少女(をとめ)、囮(をとり)、踊(をど)る、斧(をの)、檻(をり)、折(を)る、居(を)る、終(を)はる、女(をんな)など。

*語頭以外で「を」の例・・青(あを)、功(いさを)、魚(うを)、香(かをり)、鰹(かつを)、竿(さを)、栞(しをり)、萎(しを)れる、十(とを)、益荒男(ますらを)、澪(みを)、操(みさを)、夫婦(めをと)など。

 *<「を」>・・いろは順では第十二位で、定家かなづかいの流では、「端のを」と呼んでいる。一方「お」は、いろは順では第二十七位で、「奥のお」と呼んでいる。

<重たい「を」>・・ワ行の「を」を、関東など、「重たい『を』」と呼ぶ地方がある。

 *<変体仮名の固有名詞を、漢字として扱っている例>「さうせいはし」を「左宇勢以橋」としている。

(表紙)「人(じん)」・・日本の古典籍(こてんせき)、和古書(わこしょ)、和本(わほん)の冊数の数え方の三番目の冊。各冊(巻)に「第一、二 …」などと数字の呼称が与えられている場合が多い。数字以外では通常、「乾・坤(けん・こん)」、「上・中・下(じょう・ちゅう・げ)」、「天・地・人(てん・ち・じん)」、「序・破・急(じょ・は・きゅう)」などが用いられる。

また、「元・亨・利・貞(げん・こう・り・てい)」、「仁・義・礼・智・信(じん・ぎ・れい・ち・しん)」などといった呼称が用いられる。

(1) (表紙)「ふなをさ」・・船頭。

<変体仮名>・・「布」→「ふ」、「那」→「な」、「遠」→「を」、「佐」→「さ」

<漢字の話>「遠」・・「エン」は漢音、「オン」は呉音。変体仮名「遠(を)」の「を」は、呉音から発生した。呉音の例として「遠流(おんる)」「久遠(くおん)」などがある。

<変体仮名>「遠(を)」・・「を」は仮名文字発明当時、「ウォ」のような発音だった。だから、現在の発音の語頭の「オ」を「を」と書かれたものがある。

*語頭が「を」の例・・尾(を)張、鼻緒(はなを)、甥(をひ)、終(を)へる、雄々(をを)しい、丘(をか)、岡(をか)、可笑(をか)しい、犯(をか)す、拝(をが)む、桶(をけ)、長(をさ)、幼い(をさ)ない、収(をさ)める、叔父(をじ)、伯父(をぢ)惜(を)しい、教(をし)へる、牡(をす)、夫(えおっと)、男(をとこ)、一昨日(をととひ)、少女(をとめ)、囮(をとり)、踊(をど)る、斧(をの)、檻(をり)、折(を)る、居(を)る、終(を)はる、女(をんな)など。

*語頭以外で「を」の例・・青(あを)、功(いさを)、魚(うを)、香(かをり)、鰹(かつを)、竿(さを)、栞(しをり)、萎(しを)れる、十(とを)、益荒男(ますらを)、澪(みを)、操(みさを)、夫婦(めをと)など。

 *<重たい「を」>・・ワ行の「を」を、関東など、「重たい『を』」と呼ぶ地方がある。

*<無線局運用規則別表第5号和文通話表(昭和251130日公布)>・・音声通信で通信文の聞き間違いを防ぐために(「オ」と「ヲ」を区別するために)、「大阪の『オ』」「尾張の『ヲ』」と呼ぶことが決められている。ちなみに「ヰ」は、「ゐどのヰ」、「ヱ」は、「かぎのあるヱ」。

 <転音>「船長(ふなをさ)」・・「船(ふね)」が「ふな」と発音することを「転音」という。「船底(ふなぞこ)」「船便(ふなびん)」など。日本語では主として、複合語をつくる際の、前の部分の語末におこる母音の転換をいう。酒(さけ)→酒樽(さかだる)、酒屋(さかや)のたぐい。

(2)「器財(きざい)」・・うつわ。道具。また、家財道具。器材。

(3)「鯱(しゃち・しゃちほこ)」・・国字。

 <漢字の話>「鯱」一字で、「じゅちほこ」と読むことがある。「金の鯱(しゃちほこ)」。なお、「鯱」を「コ」と読んで「金鯱(キンコ)」と読むことがあるが、「コ」は音読みではない。

(3)「六寸五寸」・・「五寸」は「五分」の誤りか。

(4)「一角(いっかく)」・・イッカク科の哺乳類。イルカに類似し、体長約五メートル。

(4)「牛酪(ぎゅうらく)」・・牛乳の脂肪質を固めたもの。バター。

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古文書解読学習会

私たち、札幌歴史懇話会では、古文書の解読・学習と、関連する歴史的背景も学んでいます。約100名の参加者が楽しく学習しています。古文書を学びたい方、歴史を学びたい方、気軽においでください。くずし字、変体仮名など、古文書の基礎をはじめ、北海道の歴史や地理、民俗などを、月1回(第2月曜)学習しています。初心者には、親切に対応します。
参加費月350円です。まずは、見学においでください。初回参加者・見学者は、資料代600円をお願いします。おいで下さる方は、資料を準備する関係がありますので、事前に事務局(森)まで連絡下さい。

◎日時:2015914日(月)13時~16時

◎会場:エルプラザ4階大研修室(札幌駅北口 中央区北8西3

◎現在の学習内容

①『ふなをさ(船長)日記』・・文化10(1813)末から1年半く太平洋を漂流し、英国船に救助されてカムチャッカに送られ同13(1816)に送還された尾張の督乗丸の船長重吉の漂流談

『蝦夷地見込書秘書』・・安政元年(1864)カラフトにおける国境見込地の調査と蝦夷地状況の視察に派遣された目付堀織部と勘定吟味役村垣与三郎(後、両名とも箱館奉行となる)の諸復命書。

代表:深畑勝広  事務局:森勇二 電話090-8371-8473  moriyuzi@fd6.so-net.ne.jp 


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