(10-1)「亥子(い・ね)」・・北北東。

(10-2)「寅時(とらどき)」・・午前4時頃。

(10-2)「*(列+火)敷(はげしく)」・・影印は、「烈」の異体字。

 *<漢字の話>「烈」の部首・・「火」の部。脚になったとき、「灬」の形になり、「れっか」「れんが」と呼ぶ。「れっか」は、「列火」と書き、点のならんだ火の意。「れんが」は、「連火」と書き、点の連なった火の意。

(10-3)「終(つい)に」・・最後に、とうとう。ジャパンナレッジ版『日本国語大辞典』の「ついに」の語誌は、

 同訓異字として【終・遂・了・卒・竟】をあげ、

【終】(シュウ)おわり。おしまい。最後。「最終」「臨終」おわる。完了する。おえる。果てる。「終了」「終止」 おわりまで。いつまでも。「終日」「終生」 おしまいに。とうとう。結局。《古つひに・をはる・をへたり・をはり・きはまる・しぬ・はて・ともし》

【遂】(スイ)おして行く。とげる。なしとげる。おえる。きわめる。「遂行」「完遂」 かくして。その結果。はては。結局。《古つひに・をはる・とぐ・とぐる・とげぬ・つくす・いたる・とどむ・はたす・はたる・とほる・おふ・したがふ・ゆく・すすむ・なす・よる・やしなふ・あまねし・ひさし》

【了】(リョウ)さとる。あきらか。「了解」「了然」 おわる。おえる。おわり。「終了」「完了」 おしまいに。とうとう。結局。また、過去・完了を表わす助字。《古つひに・をはる・やむ・さとる・あきらか》

【卒】(ソツ)おわる。おえる。完了する。しとげる。「卒業」 死ぬ。「卒去」「卒年」 にわか。突然。あわただしい。「卒爾」「卒倒」おしまいに。とうとう。結局。《古つひに・をはる・やむ・しぬ・うす・ことごとく・すでに・にはか・にはかに・したがふ・つくる・とる》

【竟】(キョウ)おわる。おえる。つきる。きわめる。おわり。「竟宴」「終竟」とうとう。結局。最終的に。「畢竟」「究竟」《古つひに・をふ・をはる・きはむ・わたる》>と記している。

(10-4)「つくづく」・・思考や感情についていい、主観的に動かしがたくなった、という気持を表わす語。心から。

(10-5)「櫂(かい)の折(おれ)たる船人(ふなびと)」・・難破した人。つまり、重吉たちのこと。

(10-5)「乗(のせ)したる故(ゆえ)」・・「乗(のせ)したる」は、語調がよくない。異本は、「乗(のせ)たる」に作り、「乗し」の、「し」がない。

(10-8)「上(あが)り登(のぼり)たれば」・・語調がよくない。異本は、「上り」を「上へ」とし、「上へ登りたれば」に作る。

(11-2)「シヱガン」・・「sugar」。砂糖。                                  

(11-2)「ロンメ」・・不詳。

(11-3)「クロツバ」・・不詳。

(11-3)「ヲーツカ」・・ウオッカか。

(11-5)「歟(か)」・・句末に用いて、疑問・反語・推

量・感嘆の意を表す助字。漢文の疑問を表す助字の「歟(ヨ)」を、日本語の「か」にあてはめた。ジャパンナレッジ版『字通』には、『説文解字』の「安らかなる气(き)なり」を引いて、「ゆるい詠嘆や、かるい疑問の語気を示す」とある。

 *「来疲(くるかづかれ)」・・来るか来るかと待っている気疲れ。

*「来る(カ)疲労(ヅカレ)に、やうやうと客ねしづまる真夜中(おほびけ)すぎ」(坪内逍遙『当世書生気質』)

(11-10)「湊(みなと)」・・ジャパンナレッジ版『字通』は、『説文解字』を引いて、<声符は奏(そう)。奏は奏楽。諸楽を合奏するので、湊集の意がある。〔説文〕十一上に「水上の人の會(あつ)まるなり」とみえる。水陸より物資の集まることを、輻湊という」と説明している。

 *なお、「みなと」の語源について、ジャパンナレッジ版『日本国語大辞典』は、<「な」は「の」の意で、「水の門」の意>などをあげている。

(12-1)「渡(わた)り」・・あたり。普通、「辺り」とする。「渡」は当て字か。ある場所の、そこを含めた付近。また、そこを漠然とさし示していう。その辺一帯。あたり。へん。へ。近所。

(12-14)「此渡りに・・さまたげもせによし」・・別添の富田虎男(当時立教大学アメリカ研究所所長・現立教大学名誉教授)著「日本人のインディアン像―その1.徳川時代のインディアン像―」(立教大学アメリカ研究所刊『アメリカ研究8号』所収 1986)で、「インディアンを直接見聞した記録として伝えられている最古の者は、督乗丸船頭重吉の口述書であろう」と紹介されている。

(12-1)「穴居(けっきょ)」・・自然または人造の洞穴に住むこと。また、その住居。

(12-4)「チマヨチマヨ」・・不詳。

(12-7)「容子(ようす)」・・様子。物事の状態。有様。形勢。状況。

(12-8)「作事(さくじ)」・・船の手入れ。

(13-12)「受たれば」・・異本は、「受」の前に「見」があり、「見受けたれば」に作る。

(13-2)「いかで」・・「いかにて」の撥音便化した「いかんて」が変化した語。あとに、意志、推量、願望などの表現を伴って用いる。切なる願望のため、あれこれと方法を考える気持を表わす。何とかして。せめて。どうにかして。どうか。

(13-4)「手に付(つき)て」・・その部下となって。その配下に属して。

(13-4)「ねもごろ」・・「ねんごろ」の古形。心がこもっているさま。親身であるさま。

(13-5)「ヲロシアに随へる国」・・アラスカを指すか。ジャパンナレッジ版『日本大百科全書(ニッポニカ)』には、<1741年、ロシアのピョートル帝に雇われたデンマーク人ベーリングが発見した。ロシア毛皮商人が徐々に入植していき、18世紀末にはロシア・アメリカ会社が毛皮貿易を独占し、シトカを建設して19世紀初めに繁栄を誇った。しかし19世紀なかばになると、ロシアはイギリスがアラスカを奪いはしないかと恐れて、アメリカへの売却交渉を始め、結局1867年にアメリカのシュアード国務長官が720万ドルで購入した。これは当時「シュアードの冷蔵庫」などと嘲笑されたが、シュアードは太平洋にまたがる海洋帝国建設の一環として位置づけていたといわれる。1896年クロンダイクで金鉱が発見されると、アラスカ一帯でゴールド・ラッシュが起こり、カナダと国境紛争が生じたが、これも調停でアメリカに有利に解決した(1903)。

 1912年に準州となり、1959年に49番目の州として連邦に編入され、アメリカの大陸防衛体制の前哨(ぜんしょう)地域として戦略上重要な役割を担っている。>とある。

 *ロシアのアメリカ大陸進出略史(小坂洋右=ようすけ=著『流亡』参照)

 ・1725年1月・ロシア皇帝ピョートル1世が、ベーリングを長とする探検隊派遣命令に署名。

 ・1728322日、探検隊、カムチャッカのニジネ・カムチャックに到着。34日間航海して引き返す。

 ・1732428日、女帝アンナ・ヨアンノヴア、第二次探検隊を発令。

 ・17333月出発、ヤクーツクで3年間準備し、オホーツクに着いたのは1737年秋。

 ・17409月、ベーリングら一行第二次探検隊、アメリカ航海に乗り出す。

1741年、ベーリング、アラスカ海岸に上陸。

1784年、ロシアがコディアック島に拠点を建設

1799年 ロシアが「ロシア領アメリカ」として領有宣言し、行政を露米会社に委ねる。

1853年 ロシアがアメリカにアラスカ売却を提案。

1861329日、ロシア政府が露米会社から行政権を回収。

18671018日、ロシアがアメリカにアラスカを売却

1959年1月3日、アラスカ、アメリカの州に昇格。

(13-6)「ルキン」・・不詳。

(13-7)「誰(たれ・だれ)」・・ジャパンナレッジ版『日本国語大辞典』の「誰(たれ)」の「語誌」には、

 <近世「だれ」と変化したが、「随筆・松屋筆記‐五五・三」「徒然慰草‐一・二二段」に「今云あの人たちのもの申さるることばをきくに或は『たれ』といふことを『た』の字をにごり〈略〉かやうのかたこといくらといふかずをしらず丸か耳にさへをかしく伝ればこれをいにしへの人たちにきかせ奉らばいかばかりかなしくおぼしめされん」とあり、近世後期からの現象と思われる。現代では、「だれ」が一般的であるが、主に文語脈の中では、「たれ」ともいう。>とある。

 *「彼時(かわたれどき)」・・夜明け、または夕暮れどきの薄暗い時分。夕方を「たそがれどき」として、「かわたれどき」を特に、明け方にいうことが多い。かわたれ。「かわたれ」は「彼(か)は誰(たれ)」で、人の見分けがつきにくいの意。「かわだれ」といわない。

(13-7)「もや」・・係助詞「も」+係助詞「や」。軽い疑問を表す。「~だろうか」。下に「あり」「あらん」などを伴って、「あるだろうか」。

 *「聖教(しょうぎょう)の細やかなる理(ことわり)、いとわきまへずもやと思ひしに」(『徒然草』〉

(13-10)「あらゝげ」・・「あららげる」の文語形「あららぐ」の連用形。

(14-2)「さ迄(まで)」・・副詞「さ(然)」に助詞「まで(迄)」が付いてできたもの。副詞「さ(然)」の程度を限定強調したいい方。それほどまで。そこまで。そんなに。

(14-3)「いやとよ」・・感動詞「いや(否)」+連語「とよ」から。他人のことばを強く打ち消す時のことば。いやそうではない。

(14-7)「石火矢(いしびや)」・・玉目一貫目(口径八サンチ)以上の大口径砲を総称して石火矢という。

(14-8)「薬(くすり)」・・火薬。

(14-9)「口薬(くちぐすり)」・・火縄銃の火ぶたに用いる火薬。

(14-11)「鑓(やり)」・・「鑓」は国字。普通は、「槍」「鎗」を使う。ジャパンナレッジ版『日本国語大辞典』には、この区別について、

 <【槍】(ソウ)長い棒の先に刃物をつけた武器。「刀槍」「槍杆」《古うつき》

【鎗】(ソウ)金属や石などのふれあう音。「鎗然」かなえ。なべ。酒を入れる器。「酒鎗」 長い棒の先に刃物をつけた武器。銃。大砲。《古やり・ほこ・なべ・あしかなへ・あしなべ・おほかなへ・ゆかなへ・さすなへ》

【鑓】(国字)「槍」「鎗」に同じ。《古やり》>とある。

(15-2)「遣(つか)ふ」・・「遣」(『くずし字用例辞典』P1089)と「懸」(同P375376)のくずしは、よく似て います。

(15-3)「なめり」・・主として外観から判断、推定する意を表わす。…であると見える。…であるらしい。断定の助動詞「なり」の終止形(一説に連体形)が推定の助動詞「めり」を伴うとき音便化して「なんめり」となり、その撥音「ん」が表記されなかったもの。

(15-6)「イシ」・・不詳。

(15-6)「インチン」・・不詳。

(15-7)「人気(じんき・にんき)」・・その社会・地方の人々の気風。

(15-716-8)「此国は人気至て剛強にして・・交易するなり」・・この記述について、前掲富田虎男論文には、「日本の庶民が直接見聞した史料として、これはきわめて重要である」と述べ、「『その人気至って強剛にして、人を食う国なり』と紋切り型のインディアン像が述べられている一方、その生活や風俗について素直な観察が下されている」と評価している。(別掲論文参照)

(15-8)「乱妨(らんぼう)」・・暴力を用いて無法に掠めとること。他人のものを理不尽に強奪すること。掠奪すること。「妨」は、「そこなう」の意味。「乱妨」は、「乱れるのを妨(さまた)げる」と読まず、「乱れて、そうなう」

 *「消防」・・「消すことを防ぐ」ではなく、「消して、(延焼を)防ぐ」こと。

(15-10)「ものしたり」・・「ものす」は、言う、書く、食う、与える、その他種々の物事を行なう意を表わす。

 名詞「もの(物)」にサ変動詞「する」の付いてできたもの。種々の動詞の代わりとして、ある動作をそれと明示しないで婉曲(えんきょく)に表現するのに用いる。人間の肉体による基本的な動作をさす場合が多く、中古の仮名文学に多く用いられた。