(57-1)「一同に」・・一緒に。

(57-3)「去(さる)にても」・・然るにても。[連語]《動詞「さり」(ラ変)の連体形+連語「にて」+係助詞「も」》「然」を「去」とするのは、当て字。「さる」は、「然有(さり)」で、副詞「さ」にラ変動詞「あり」の連体形「ある」のついた語で、「さある」が変化した語。そうであっても。それにしても。それはそれとしても

(57-5)「心へたり」・・文法的には、「心へ」は、「心え」が正しい。「心得(う)」は、ア行下2動詞だから、その連用形は、「心え」。

(57-6)「受(うけ)がひ」・・承知して。「うけがふ」は、「肯ふ」で、よいと認める。肯定する。承諾する。承知する。

(57-6)「こよなう」・・この上なく。非常に。とても。形容詞「こよなし」の連用形。「こよなし」は、後世、連用形、連体形が文章語として「この上ない」の意に用いられる。語源に関しては「これ(是)より(従)無し」「こよ(越)無し」「このよ(此世)無し」などの説がある。

(57-10)「深切(しんせつ)」・・他人への心情で、思いやりのあること。特に相手のために配慮のゆきとどいていること。また、そのさま。この味が派生したのは中世ごろからと思われる。「日葡辞書」の訳語は現在の「親切」にあたるが、「フカイタイセツ」とあるので、表記は「深切」であったと考えられる。(『ジャパンナレッジ版『日本国語大辞典』の「深切」の補注』)

(58-2)「滞留(たいりゅう)」・・旅先にしばらくとどまっていること。滞在。逗留。

(58-2)「くさぐさ」・・種々。物事の種類や品数などの多いこと。また、そのさま。いろいろ。さまざま。

(58-3)「片はし」・・片端。ほんの一部分。一端。

(58-3)「聞(きか)まほし」・・聞きたい。「まほし」は、動詞および助動詞「す」「さす」「ぬ」の未然形に下接する。話し手、またはそれ以外の人物の願望を表わす。…したい。

 *「まほし」の語誌・・ジャパンナレッジ版『日本国語大辞典』には、

 <(1)語源については、推量の助動詞「む」のク語法「まく」と形容詞「欲し」とが合した「まくほし」が変化したとする説、「ま」に直接「欲し」が付いたとする説などがある。

(2)奈良時代から平安初期までは「まくほし」が用いられ、その後の和歌やかなの日記・物語などでは、「まほし」が用いられている。訓点語には用例が見られない。鎌倉時代になると、擬古的な文章を除いて一般的には「たし」が多用されるようになり、中世以後は雅語としてとらえられた。

(3)話し手以外の人物の願望を表わすところから、接尾語として取り扱う説(時枝誠記)もある。

(4)(2)の、そうあってほしいというところから、理想的だという意味の「あらまほし」のような用法が成立した。>とある。

(58-4)「からき思ひ」・・つらい思い。「からき」は、「辛(から)し」の連用形。「辛し」は、苦しい。つらい。せつない。悲痛だ。

(58-6)「まなび」・・学び。見たり聞いたりしたことを、そっくり人に語り伝える。

 *ジャパンナレッジ版『日本国語大辞典』の「まねぶ」の語誌に、

 <マナブは漢文訓読文、マネブは和文にそれぞれ多く用いられており、性差・位相差も考えられるが、マネブの使用例の多くは口まねする、あるできごとをその通りに模倣するの意で、教えを受ける・学問するといった意味あいはマナブにくらべるとずっと少ない。そのため模倣を意味するマネルが広く用いられるようになると、マネブは口頭語から退いてマナブの雅語のように意識されるに至る。>とある。

(58-6)「物しつる」・・「物す」は、言う、書く、食う、与える、その他種々の物事を行なう意を表わす。本文書では、話す。

(58-7)「事にふれ」・・何かにつけて。折に触れて。機会があるたびごとに。

(58-7~8)「まねび」・・(58-6)の「まなび」に同じ。

(58-8)「何事にまれ」・・何事であろうと。「まれ」は、連語で、係助詞「も」に動詞「ある」の命令形「あれ」の付いた「もあれ」の変化したもの。…(で)あろうと。…でも。

(58-8)「風与(ふと)しても」・・偶然になされるさま。ちょっとしたきっかけや思いつきで行なうさま。ひょいと。はからずも。

 *「ふと」に当てる字・・「与風」「不図」「風度」「与と」「不と」「風と」などがある。

 *「風」を、「フ」と読む熟語に「風情(ふぜい)」「風呂(ふろ)」「風土記(ふどき)」などがある。

(58-9)「わざ」・・業。こと。ありさま。おもむき。「容易なわざではない」

(58-9~10)「のどやか」・・長閑か。気持をのんびりして、ゆっくりするさま。時間的にゆとりのあるさま。

(58-10~11)「兎(と)有(あり)し、角有(かか)し」・・ああであった、こうであった。

 *「よの人のとあるかかるけぢめもききつめ給ひて」(『源氏物語 朝顔』)

 *「一事も見洩らさじとまぼりて、とありかかりと物ごとに言ひて」(『徒然草』)

 *「事のやう聞きてのち、とありかかりとわきても答へめ、疾く語り給へといへば」(『御伽草子・伊香物語』)

 *「かかり」・・斯有り。「かくあり」の変化した語。このようである。こんなである。

  **「かからば」・・斯有らば。かくあらば。それならば。こういうことならば。

  **「かかるに」・・斯有るに。かくあるに。

  **「かかれど」・・斯有れど。かくあれど。

  **「かかれば」・・斯有れば。かくあれば。

  **「とありともかかりとも」・・事態の雑多をそのまま容認する気持を表わす。どのようであっても。いかようでも。

(59-1)「あなる」・・「あなる」は、「あなり」の連体形。「あなり」は、動詞「あり」に伝聞推定の助動詞「なり」

の付いた「ありなり」の音便「あんなり」の「ん」が表記されなかった形。あるようだ。あるそうだ。あると

いう。

 (59-1)「仮初(かりそめ)」・・ふとしたさま。ほんの一時のさま。まにあわせ。その場かぎり。「仮初」は、当て字。

(59-1)「たいめ」・・「たいめん(対面)」の撥音無表記。対面。

(59-2)「かたきわざ」・・難き業。むずかいしいこと。

(59-2~3)「あかぬ心地」・・「あか・ぬ・心地」で、「あく=四段動詞〔飽く(十分満足する、堪能する、心ゆく)〕の未然形」+「ぬ=打消の助動詞〔ず〕の連体形」+「「心地」。飽きたりない気持ち、不満足な気持ち
「あながち」・・強ち。強引なさま。むりやりなさま。

(59-3)

(59-3)「手あて」・・手だて。手段。

(59-6~7)「やういく」・・養育。養い育てること。はぐくむこと。「やういく」は歴史的仮名遣い。発音は、「ヨーイク」。

(59-9)「国風(こくふう・くにふう・くにぶり)」・・その国の風俗、習慣。その地方の気風。

(59-10)「物入(ものいり)」・・費用のかかること。金銭を費やすこと。出費。

(59-11)「ついへ」・・ついえ。費。費用のかかること。金銭を費やすこと。出費。

(61-2)「重吉の等が」・・「の」は誤記か。ここは、「重吉等が」か。

(61-6)「爰彼所(ここかしこ)」・・このところあのところ。この場所あの場所。此処彼処。

(61ー8)「するど」・・物が鋭くとがっているさま。鋭利なさま。

 ジャパンナレッジ版『日本国語大辞典』の「ずるど」の語誌には、

 <(1)中古以来の訓点資料に見られる語で、中世においても、軍記物語や抄物に多く用いられた。本来は物の先端の尖っている様子を意味する語であったが、後には人間の行動の機敏な様子をも表わすようになった。

(2)中世後期には、形容詞「するどし」が派生、時代が下るとともに形容詞の方が多く用いられるようになり、形容動詞は文章語的な性格が強まっていく。このような語義変化や形容詞派生の背景には、「すすどし」からの影響が考えられる。なお、近世には「すんど」という形も用いられた。>とある。

(62-2)「あかがねのへ」・・「あかがね」は、銅。「のへ」は不明。異本は、「銅にて」「銅もて」としている。

(62-3)「煙出(けむだ・けぶりだ・けむりだ)し」・・内部の煙を排出するために開けた、煙の出口。多く、家屋の軒下や屋根に開けた窓や煙突をいうが、炭焼きなどの竈(かま)や、船、蒸気機関車などの煙突をもいう。また、かやぶきの屋根などで、屋根の上に作ったけむだしを、特に、「櫓煙出(やぐらけむだし)」という。

 *ジャパンナレッジ版『日本国語大辞典』には、「なまり」として、ケブダシ〔岩手・山形小国・栃木・信州上田〕、ケブダス〔千葉〕、ケブッダシ〔長崎・島原方言〕、ケモダシ〔仙台音韻・栃木〕、ケムタシ(常総)をげている。

(62-5)「がんぎ」・・雁木。階段。地方によっては、いろいろな場面に使われる。①海岸の石垣など設けられた階段。②桟橋の階段。③道路から川原などにおりる所につくられた段。④神社、寺院などの石段。⑤道路から前庭へ登る石段。語源は、雁が群れをなして空を飛ぶときのような形をしたものから、ぎざぎざの形、階段をいう。

(62-8)「三尺計もも」・・「も」が重複か。あるいは、二つ目の「も」は見せ消ちか。

(62-10)「観音びらき」・・扉の一種。観音をおさめる厨子の戸をまねて、左右の扉を中央で合わせるように作った戸。仏壇、倉、門などに多く用いられる。