臼山焼 注 2011.4.11 森勇二(33-8)「猶々(なおなお)」・・手紙文などの最後に別の事柄を追加するときに用いる。加えて。追伸、二伸、追
而。
<追而書(おってがき)>書状の本文で述べられなかったことを書状の端または礼紙(らいし)に書き加えるこ
と。その書き出しが「追而申」から始まるのでこの名が起きた。「なほなほ(尚々・猶々)」から始まるものも多いので、「なおなおがき(尚々書・猶々書)」ともいう。私文書に発達した形式であるが、十二世紀になって綸旨・院宣などが私文書と同一の形式をとって行われるようになると、公文書にもこの形式が多く用いられるようになった。
(33-9)「引移(ひきうつり)」・・名詞。物や事柄が他に移ること。特に、住居・居場所が他に移ること。引っ越し。
*「気のきいた僕を二人計り紳士の従者に添へて引移(ヒキウツ)りの手伝をさせろ」(「露団々」幸田露伴)*「ま、引移(ヒキウツ)りをするが宜からうとて」(「うつせみ」樋口一葉)
(34-1)「可申上(もうしあぐべく)」<文法の話>・・4段動詞「申(もう)す」の連用形「申(もう)し」+下2段動詞「上(あ)ぐ」の終止形「上(あ)ぐ」+助動詞「べし」の連用形「べく」
*助動詞「べし」は、動詞の終止形に接続する。ただし、ラ変動詞の場合は、連体形に接続する。
(34-4)「御用番(ごようばん)」・・松前藩の役職名。正しくは、「御用人」。中老の下位。
(34-4)「松前勘解由(まつまえかげゆ)」・・当時松前家の御用人。蠣崎広伴(かきざきひろとも)の次男。松前藩家老松前広当(ひろまさ)の家をつぐ。嘉永7年(1854)ペリーの箱館来航の際,藩の応接使をつとめる。のち筆頭家老。戊辰(ぼしん)戦争のおり正議隊(勤王派)の政変で職を追われ,慶応4年8月3日自刃(じじん)。名は崇効(たかのり)。勘解由は、官名。資料1.
*勘解由・・国司などが交替するとき、後任者が前任者に与える不与解由状(ふよげゆじょう)などの書類を審査する中央官庁。奈良時代中期よりの地方政治の弛緩と天平17年(745)の公廨稲(くげとう)設置により、前任国司と後任国司の利害が対立し、その交替が円滑を欠き、地方政治がいっそう混乱することを防止するため設置された。設置時は延暦16年(797)以前とする説もあるが、同年にはじめて勘解由使官人の名がみえ、翌年官位相当も定まり、国司交替の細則が定められているので、延暦16年に設置されたものと思われる。大同元年(806)には新設された観察使にその職務がひきつがれて一旦廃止されたが、淳和天皇らによる広汎な政治刷新の一環として天長元年(824)に再設され、以後常置された。これより先大同四年に国司のほかに内官の解由もとることになったこともあって、天長五年には事務繁雑のためこれまでの史生八人に加えて書生十人をおいた。また天安元年(857)に勘解由使官人の官位相当を引き上げたが、それによると定員と官位相当は、長官一人・従四位下、次官二人・従五位下、判官三人・従六位下、主典三人・従七位下であった。延暦十七年以降国司を中心として次第に交替制度が整備されていき、勘解由使では延暦・貞観・延喜の交替式を編纂し、官人交替の基準を定めたが、これらにより官人交替の方法と勘解由使の職務がよくわかる。勘解由使の書類審査を勘判といい、『政事要略』所引の勘解由使勘判抄は勘判の実態を示し貴重である。勘解由使は平安時代初期に最も機能を果たしたが、延喜15年(914)に受領功過定が行われるようになったのち、勘解由使の提出する資料も功過判定に使用されたので、受領の活躍した平安時代末期までは機能を果たしたものと思われる。
(34-4)「工藤貞右衛門(くどうさだえもん)」・・『嘉永六癸丑年御扶持列席帳』(『松前町史史料編第1巻』)に、「新組御徒士」として、名が見える。
(34-5)「被仰達(おおせたっせられ)」・・「仰達(おおせたっす)」は、上位の者の言葉が、下位の者のもとに届く。おっしゃってよこす。
<文法の話>複合サ変動詞「仰達(おおせたっ)す」の未然形「仰達(おおせたっ)せ」+尊敬の助動詞「らる」の連用形「られ」。
(34-7)「在方(ざいかた)」・・町方に対していう。田舎(いなか)。在所。在。
(34-8)「在住(ざいじゅう)」・・その所に住んでいること。居住。
(35-9)「一筆啓上仕候(いっぴつけいじょうつかまつりそうろう)」・・中世後期以降、男性の書状の起頭の常套句。実際の書状では、普通、何らかの補助動詞を伴って用いられる。室町期には「一筆令啓上候(せしめそうろう)」が一般的で、江戸期には、書状の起頭の形式には、敬意の高い順に、一筆奉啓上候・一筆啓上仕候・一筆致啓達候・一筆申入候・一筆令啓上候・一書申候、があった。この他にも「一筆致啓上候」など、種々のバリエーションが見られる。
(36-2)「愈(いよいよ)」<くずし字の話>・・くずし字では、脚の「心」が、「一」となる場合が多い。
(36-5)「勇健(ゆうけん)」・・健康であること。達者であること。また、そのさま。書簡文に用いることが多い。壮健。雄健。
(36-6)「一条(いちじょう)」・・ある一つの事柄。多く、相手がそれを知っている場合に用いて、「例のあの事」の意。一件。
(37-4)「申談(もうしだんじ)」・・(動詞「だんずる(談)」の連用形の名詞化)。お話し合い。ご相談。
(37-8)「案内(あない・あんない)」・・中古のかな文では、撥音「ん」を表記しないで「あない」と書くことが多い)本来、「案」は文書の写し、および下書きをいい、「案内」は案の内容を意味した。平安時代以後、内情、事情その他の意に転じて用いられている。本文では、事情、様子などを知らせること。しらせ。便り。
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