(35-2)「平遠(へいえん)」・・平坦で遠くひらけていること。はるかに広がっていること。また、そのさま。
(35-3)「寄洲(よりす)」・・水流や風波のために、河口・海岸などに土砂が吹き寄せられて自然に生じた州
*<漢字の話>「洲」と「州」・・元来は、「洲」は「州」の俗字。のち州県の字と区別して、川の洲や大陸の名に用いる。「中洲」「五大洲」など。なお、現代表記では、「州」に書きかえる。
(35-3割注右)「黒竜江(こくりゅうこう)」・・中国東北部とロシア国シベリア州との国境線を流れる大河。アムール河とも呼ばれる。全長4,350キロで世界8位。ケンテイ山に源を発して、外蒙古のオノン・ケルレン両河となり、漠河の西方で合流してからその下流を黒竜江といい、支流の松花江・ウスリ江などを入れて間宮海峡に注ぐ。結氷期の十月下旬から四月中旬までを除き、可航水路は本支流を合して5,700キロにも及び、重要な交通路となっている。漢語では早く黒水の名で呼ばれているが、それは満洲語の「サハリャン=ウラSahalien-ula」の意訳という。元・明以後に黒竜江の呼称となる。なお、オホーツク海の流氷は、アムール川からの流水により塩分濃度が薄くなったことによって凝固点が高くなった海水が氷結して形成される。
*<漢字の話>「竜」と「龍」
①ジャパンナレッジ版『字通』は、<「竜」は「龍」の初文。「龍」はその繁文。>とある。とすると、「竜」が古いか。
②日本における「竜」「龍」の漢字表の変遷
・昭和26年5月・・「龍」が人名漢字に選ばれた。
・昭和29年3月・・「竜」が、当用漢字補正案に選ばれた。その際、人名漢字の「龍」は「滝」に合せて
「竜」に字体整理された。
・昭和56年10月・・常用漢字制定時にも「竜」の字体が選ばれた。その際、康煕字典体の活字として括弧内に「龍」が掲げられ、現在に至っている。
・昭和56年10月・・「龍」が人名漢字許容字体となった。
・平成16年9月・・「龍」が人名漢字に追加された。
③「竜」の部首は、ほとんどの漢和辞典は、16画の「龍」部に入っている。
(35-3割注右)「万古(ばんこ)」・・大昔から今に至るまで。久しい間。永久。永遠。
*<漢字の話>「万」・・
①「マン」は呉音。「万葉(まんよう)」「万引(まんび)き」など。
②「バン」は、漢音。「万全(ばんぜん)」「万事(ばんじ)」「万端(ばんたん)」など。
③「バン・マン」の両方の読みがある熟語には、「万人(まんにん・ばんにん)」「万歳(まんざい・ばんざい)」など。
(35-3割注右)「流注(りゅうちゅう・るちゅう・るじゅう)」・・流れそそぐこと。流れ込むこと。また、流し込むこと。
(35-3割注左)「砂土(しゃど・さど・すなつち・いさごづち)」・・砂の多い土地。なお、日本農学会法により粘土分の重量組成割合が12.5%以下の土を砂土とよんだ。
(35-3割注左)「嶼磧(しょせき)」・・「嶼」は、小山。「磧」はかわら。
(35-4割注右)「彫刻(ちょうこく)」・・ここでは、版木を彫ること。
(35-4割注右)「黒龍口と流注海口」・・『蝦夷地御開拓諸御書付書類』は、「黒龍江流注の海口」とある。
(35-4割注右)「海口(かいこう)」・・港のこと。
(35-4割注左)「島嶼(とうしょ)」・・「島」は大きなしま、「嶼」は小さなしま。いくつかのしまじま。しま。
(35-4割注左)「接聯(せつれん)」・・つらなり続くこと。「聯」は、現代表記では「連」の置きかえる。
(35-5割注右)「喬岳(きょうがく)」・・高い山。そびえ立つ大きな山。
*<漢字の話>「喬」・・象形文字。解字は、高い楼閣の上に旗が建てられた形をかたどり、「高い」の意味を表す。「驕」「僑」「嬌」など、「喬」を音符に含む文字は、「高い」の意味を持つ。「橋」は、谷川に高く懸けられたはしの意味を表す。
(35-5割注右)「平莎(へいさ・へいしゃ)」・・平沙。平坦で広大な砂原。
*<漢字の話>「莎」・・影印の「莎」は、はまずげ。
(35-5)「険易(けんい)」・・むずかしいことと、やさしいこと。難易。本文では、(海岸の)険しさとなだらかさ。
(35-7) 「分界(ぶんかい)」・・境目をつけてわけること。また、その境目。
(35-8)「合考(ごうこう・あわせかんがえ)」・・他の事柄と合わせ考えること。
(35-10)「冱寒(ごかん)」・・寒さにとじこめられること。
*『沙氏伝』より
其蔵レ冰也 其の冰(ひょう)を蔵するや
深山窮谷 深山窮谷(きゅうこく)の
固陰冱寒 固陰(こいん)冱寒(ごかん)す
于是乎取レ之 是(ここ)に於(おい)てか之(こ)れを取る
<意訳>氷をしまいこむところは、深い山中の谷の奥、日もささず水気も無いひえびえと冷たいところ。その場所から、夏のはじめに取りだすのでございます。
*<漢字の話>「冱」
①ジャパンナレッジ版『字通』には、
<〔荘子、斉物論〕に、至人の徳を称して「河漢冱(こお)るも寒(こご)えしむること能はず」という。わが国では寒さのさえることをいい、「冴」の字を用いるが、字形を誤ったものであろう。互に連互する意があり、広く結氷してゆく状態をいう。>とある。
②「冱」の部首は「冫」(二水。にすい)。「氵」を三水(サンズイ)というのに対して、いう。
③「冫」(にすい)部には、「冷」「冴」「凍」など、「こおる」「さむい」の意を含む文字でできている。
④常用漢字の「冬」は、現在の漢和辞典では、「夂」(すいにょう・ふゆがしら・なつのあし)部としている
が、旧字体のは、「冫」(にすい)部。冬はさむいので、「冫」(にすい)部の方が、意味があっていい。
⑤同様に、常用漢字の「寒」は、現在の漢和辞典では「宀」(うかんむり)に属している。旧字体は、で、「冫」(にすい)部。どうして、「冫」のままにしなかったのか。「宀」では、意味不明。
(35-10~11)「窮陰(きゅういん)」・・きわめて暗いこと。
(36-1)「如何御手広」・・『蝦夷地御開拓諸御書付書類』は、「如何」のあとに、「様」があり、「如何様」とある。
(36-2)「後来(こうらい)」・・こののち。ゆくすえ。将来。
(36-2)「禍患(かかん)」・・わざわい。不幸。苦難。