(90-1)「熨斗目(のしめ)」:練り糸を縦に、生糸(きいと)を横にして織った絹布。また、その布地で作った、腰の部分だけ縞(しま)を織り出した衣服。江戸時代に武家の礼服として用い、麻の裃(かみしも)の下に着た。
*「熨斗目」の語源:「のし目」という言葉の由来は定かではありませんが、本来は平織物の横段柄であったので、平織物の滑らかな風合いから、「伸し目(のしめ)」、と呼ばれるようになったとか、あるいは火伸しの道具である熨斗(アイロンのようなものでしょうか)によって平らにされた絹地という意味だともいわれています。(ウェブサイト『丸太や』HP)
*<日常の食事のおかずは野菜が中心であっても、めでたいときの食事には、ぜひとも生臭物を口にしたいと念願した。そういう背景のなかで、仏教はたてまえとして魚食を禁じ、仏事のときの食事はすべて精進(しょうじん)料理であった。そのため仏事以外の贈答品には、精進でないことを示すために生臭物の代表として「熨斗鮑」を添えることになった。魚の鰭(ひれ)を台所の板戸などに貼(は)り付けておき、2、3本ひっかいて、めでたいときの贈答品に添える例もあり、鶏の羽を1本添える所もある。正月の鏡餅(もち)に大(おお)熨斗、束ね熨斗を飾るのも、婚礼の結納品目に束ね熨斗が入っているのも、凶事でないことを強調する意味があった。したがって凶事の贈答品には、熨斗をつけないのが本来の形であったが、近年は紅白の紙にかえて黒と白または青と白の紙に挟み、同色の水引で結んだ熨斗をつけることが一般化している。吉凶にかかわらず、熨斗鮑の部分に黄色い紙などを使い、また、熨斗と水引を印刷した進物用の包み紙や、金銭を贈るときに使う熨斗袋もあり、本来の意味が忘れられて形式化している。>(ジャパンナレッジ版『日本大百科全書』)
*「熨斗」:本来は、「ひのし」(アイロン)で、「熨」を「のす」と動詞扱いに訓じた。「斗」は、ひしゃくの形をしたもの。
(90-3)「暇乞御礼(いとまごいおれい)」:「暇乞」は、別れを告げること。別れのあいさつをすること。「御礼」は、江戸時代、在府の大名が、毎月一日、一五日、二八日の月次(つきなみ)、および大礼の日に登城して将軍に拝謁すること。ここでは逝去した松前藩主道広の遺髪に拝謁すること。
*「乞」のくずし字:楷書では「ノ」+「一」だが、くずし字では2画目の「一」を右から書き、1画目の「ノ」に続ける。
(90-3)「服紗小袖(ふくさこそで)」:袱紗小袖。江戸時代の小袖の一種。晴の小袖に対するもので、男子の場合は羽二重以外、女子の場合は綸子以外の布地を用いた小袖。
(90-4)「独礼(どくれい)」:儀式のある日、藩主に謁見する際に、ひとりで進み出ること。
(90-4)「奉(ほう)」:奉送。貴人を見送ること。お見送り申し上げること。
(90-5)「御用達(ごようたし・ごようだち)」:認可を得て、宮中・幕府・諸大名などに用品を納入する商人。
(90-5)「御目見(おめみえ)」:江戸時代、将軍に直接お目通りすること。また、それが許される身分。御目見以上は旗本、御目見以下は御家人を意味する。
<(1)「見る」という行為を自発的なものとして表現する動詞「見ゆ」の連用形「みえ」に名詞「目」を冠した「目見え」に、さらに尊敬を表わす接頭語「お」を冠した語。女性語としては「御目文字」が使われる。
(2)「お目に掛かる」と同様に目上の人の目に見えるという婉曲表現による謙譲表現。
(3)「目見」と関連して、別に「まみゆ」の語形があるが、こちらは院政期の文献までさかのぼることができる。これに対して「目」を「め」とする「おめみえ」は、中世末から近世以降の新しい語形と考えられる。>(ジャパンナレッジ版『日本国語大辞典』語誌)
(90-7)「犬上郡兵衛」:松前藩勘定奉行。
(90-7)「桜庭丈左衛門」:松前藩勘定奉行。
(90-8)「鹿能善藏」:松前藩勘定奉行。
*「鹿」のくずし字・異体字は、脚部の「比」が省略される場合がある。
(90-8)「三村周太」:松前藩目附。
(90-8)「桜庭左右吉」:松前藩勘定吟味役。
(91-2)「御意(ぎょい)」:主君や貴人などの仰せ。おさしず。ご命令。おことば。
(92-1)「紋付(もんつき)」:紋のついた礼装用の和服。紋服。五つ紋を正式なものとし、略式に一つ紋と三つ紋とがある。
(92-1)「上下(かみしも)」:①(上代において)上着と袴(はかま)。
②(平安・中世において)狩衣(かりぎぬ)・水干(すいかん)・直垂(ひたたれ)・素襖(すおう)などの上着と袴(はかま)とが、同色の同じ布地のもの。
③(近世において)武家正装の一つ。同色の同じ布地で作った肩衣(かたぎぬ)と袴。紋付きの熨斗目(のしめ)か紋付きの小袖(こそで)の上に着用。
*「かみしも」に「裃」を当てる場合がある。「裃」は国字。
(92-1)「具(ぐ)」:「具」は必要なものを備えることを表し、一揃 (ひとそろ) いの用具を数える。主に、衣服・器具などを数えるのに用いる。
① ふたつ以上のものがそろって完備する衣裳。「裃 (かみしも) 1具」「御衣(おんぞ)
一具」②印籠(いんろう)③輿
(こし)④数珠(じゅず)➄櫛 (くし)⑥鞍(くら)⑦駕籠
(かご)
*一具弓懸(いちぐゆがけ):弓を射るときに指を守るための手袋。(ジャパンナレッジ版『数え方の辞典』)
*「具」は、常用漢字。旧字体は「
*「倶知安」、「倶利伽羅峠」の「倶」は、俗字。正字は「俱」。
*ところが、「危惧(きぐ)」の「惧」は、常用漢字になっている。「忄」+「具」は俗字。
(92-2)「被下置(くだしおかれ)」:「下置」は、「申し渡しておく」または「与えおく」。
「被」は、くずし字の決まり字。ひらがなの「ら」に見える。
*訓読文「被二下シ置カ一」(くだしおかれ)
下は、『くずし字辞典』の「被」
(92-3)「肴(さかな)」:「酒(さか)菜(な)」の意。「な」は副食物の総称。
① 酒を飲む時の副食物。酒のさかな。つまみ。
② 酒宴に興を添えるための歌や踊り。酒席の余興。
*「魚」は、もともとイヲ・ウヲが用いられていた。江戸時代以降、しだいにサカナがこの意味領域を侵しはじめ、明治時代以降、イヲ・ウヲにとって代わるようになった。
(92-4)「荷(か)」:「荷」は天秤棒(てんびんぼう)の前後に下げる荷物を数える語。樽2本で「1荷」。「1駄」は酒3斗5升入りの樽、2樽のこと。
(92-5)「不被下置」:訓読文は「不レ被二下シ置カ一」(くだシおかれず)
(92-6)「計(ばかり)」:…だけ。中古には(「ほんの…ぐらい(だけ)」の意において用いられ、やがて限定の用法が成立する。次第に限定の「ばかり」が勢力を増し、「ばかり」より語史的には古い「のみ」を侵していく。しかし、中世では副助詞「ほど」に、近世では「ほど」「ぐらい」に程度の用法を侵され、また、近世以後「だけ」「きり」に限定の用法を侵されることになる。
(92-6)「不致旨(いたさざるむね)」:ここの「不」は「可」で、「可致旨(いたすべき)」か。
(92-7)「嘉十郎」:豊田嘉十郎。松前藩町吟味役。
(93-5)「名乗(なのり)」:公家・武家の男子が元服に際して、幼名や通称のほかに新しくつける名。牛若丸・九郎に対する義経の類。実名(じつみょう)。
(93-6)「懸紙(かけがみ)」:文書(もんじょ)の上にかけて包む紙。本紙(ほんし)を包むための包み紙、封をするための封紙(ふうし)などの総称。
(93-7)「先手組(さきてぐみ)」:江戸幕府の職名の一つ。先手鉄砲組・先手弓組の併称。寛永九年(一六三二)に鉄砲一五組、弓一〇組の計二五組と定めたが、のち二八組(鉄砲二〇組、弓八組)となった。江戸城内外の警衛、将軍出向の際の警固、市中の火付盗賊改などに当たった。各藩にも同様の組織があった。